2011年5月21日土曜日

ヨーカ堂、打倒ユニクロ 脱スーパーへ、SPA積極化 

 大手スーパー各社が、長引くデフレと消費低迷で苦戦の続く衣料品事業の立て直しに動き出した。セブン&アイホールディングス傘下のイトーヨーカ堂は、アパレル中堅のクロスプラスとの協業で、商品企画から製造販売までを一貫で手がけるSPA(製造小売り)方式による衣料品の新ブランドを今月上旬に立ち上げる。イオンもSPAの専門子会社を新設し、この秋冬から展開するプライベートブランド(自主企画、PB)衣料の新ブランドで事業モデルの改革に乗り出した。ユニクロを筆頭とする「ファストファッション」からの顧客奪還を狙うスーパーの“逆襲”で、今年の秋冬衣料商戦は過熱しそうだ。

■グラフ■ 長引くデフレと消費低迷の実態が明らかに

 ■「プロ」と協業

 ヨーカ堂が立ち上げる新衣料ブランドは、35歳以上を対象に、オンとオフの着回しができる品ぞろえを意識。ツイードのジャケットなど全身のコーディネートで1万円前後に価格を抑える。男女と子供のカジュアル衣料品も展開し、当初は30店程度に取扱店舗を絞る方針だ。

 クロスプラスは、日本を代表するデザイナーの島田順子氏や田山淳朗氏の高級ブランドを手がける一方、量販店向けに、ライセンスも含めて約50のブランドを展開し、SPA事業に精通する。セブン&アイとはすでに同グループ傘下の百貨店そごう?西武のPB衣料「リミテッド エディション」で協業しており、協力関係をスーパー衣料に広げる。

 ライバルのイオンは、今秋冬から投入する新ブランド「トップバリュコレクション」を自前のSPA子会社で展開するのに対し、ヨーカ堂は実績のある「SPAのプロ」との協業を選んだ。

 ■不況でもリピーター

 一方、西友は、親会社である小売り最大手、米ウォルマートの衣料ブランド「ジョージ」を2005年に導入。販促に外国人のモデルを起用し、ウォルマート製の陳列用機材もとり入れるなどして差別化を図ってきた。09年の売上高は前年比で婦人服が15%増、子供服が50%増と好調だ。

 今年は初めて水着を投入。今後は下着など日本未発売の品目を増やし、他店に対抗する。関係者は「ファストファッションが日本に進出する前からやっているので不況でもリピーターがいる」と胸を張る。

 スーパーの7月の全国売上高(既存店ベース)が前年同月比1.2%減と、20カ月連続のマイナスとなる中、イオンリテールの村井正平社長は「衣料品の抜本改革なくしてスーパー事業の再生はない」と言い切る。スーパーの売り上げに占める衣料品の構成比は4分の1強と、食品に次いで高く、しかも利益率は30?40%と、食品の25%を上回るためだ。それだけに、この秋冬商戦以降の各社の衣料分野の巻き返し策は今後の経営の鍵を握る。

 ■ブランドイメージ 位置づけ困難

 ただ、SPAの事業モデルや流行のデザインを取り入れるだけで、世界のファストファッションブランドと互角に戦えるわけではない。ユニクロはこの10年、ブランドロゴや内装、CMなど販促物を一新し、アートディレクターの佐藤可士和氏など国内外の第一線で活躍する人材を起用するなど、最新の流行をいち早く取り入れてきた。

 スウェーデンのカジュアル衣料店「ヘネス?アンド?マウリッツ(H&M)」は、100人の社内デザイナーが世界中の都市を回り、3週間単位でデザインを一新する。店舗では頻繁に商品を入れ替えて、新鮮さをアピール。各社はロゴや売り場、接客など総力戦でブランドのイメージを演出している。

 これに対し、イオンは新ブランドに米カジュアルブランド、アバクロンビー&フィッチ(アバクロ)の元デザイナーを起用したが、大半の店舗は、既存の衣料品売り場のままで商品を販売する。06年から展開しているヨーカ堂の自社開発カジュアル衣料ブランド「pbi(ペーベーイー)」も苦戦。業界関係者からは「スーパーのやり方を全否定しないと成功は難しい」との声が漏れる。流行の変化が早く、消費者ニーズも細分化する中、スーパー衣料品のブランドイメージをどう市場に位置づけるのか。“打倒ユニクロ”は容易ではない。


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引用元:信長 rmt